報酬額の制限とは?

宅地建物取引業法

宅地建物取引業法(以下、宅建業法)では、宅地建物取引業者(以下、宅建業者)が宅地または建物の売買、交換、貸借の媒介(仲介)または代理に関して受け取ることのできる報酬の額(上限額)を定めています。これは、依頼者が不当に高額な報酬を請求されることを防ぎ、取引の公正性を確保するための規制です。

この報酬額は、宅建業法第46条の規定に基づき、国土交通大臣の告示(昭和四十五年建設省告示第千五百五十四号)によって具体的に定められています。宅建業者は、この上限額を超えて報酬を受け取ることはできません。


売買・交換の媒介(仲介)における報酬

売買または交換の媒介(仲介)の場合、取引額(売買価格)に応じて、以下の計算式で算出した額が上限となります。この金額は、依頼者の一方から受け取れる上限額です。

取引額(税抜)報酬限度額(税抜)
200万円以下の部分取引額の5%
200万円を超え400万円以下の部分取引額の4%
400万円を超える部分取引額の3%

【速算式】 実務上は、以下の速算式が用いられます。

取引額(税抜)報酬限度額(税抜)の速算式
200万円を超え400万円以下取引額 × 4% + 2万円
400万円を超える場合取引額 × 3% + 6万円

※注意事項

  • 上記の計算で算出した報酬額に、別途消費税を加算することができます。
  • 計算の基礎となる取引額には、消費税を含みません(税抜価格で計算します)。
  • 宅建業者は、売主と買主の双方から媒介依頼を受けた場合、それぞれから上記の報酬限度額まで受け取ることができます。合計では、上記限度額の2倍が上限となります。

売買・交換の代理における報酬

代理の場合、依頼者から受け取れる報酬の上限額は、媒介(仲介)の場合の2倍です。 つまり、「取引額 × 3% + 6万円(400万円超の場合)」の2倍が上限となります。

※注意事項

  • ただし、宅建業者が売主と買主の双方から報酬を受け取る場合(例:売主の代理、買主の媒介)、その合計額は、媒介(仲介)の報酬限度額の2倍(つまり、売主・買主双方から媒介として報酬を得る場合の合計額)を超えることはできません。

貸借(賃貸)の媒介(仲介)・代理における報酬

貸借(賃貸)の場合、依頼者双方から受け取ることのできる報酬の合計額は、借賃の1ヶ月分が上限です。

【原則】

  • 依頼者双方から受け取る報酬合計額の上限借賃の1ヶ月分 + 消費税
  • 依頼者の一方から受け取れる報酬の上限: 原則として借賃の0.5ヶ月分 + 消費税
    • ただし、依頼の際にその依頼者の承諾を得ている場合は、1ヶ月分まで受け取ることができます。

※注意事項

  • 居住用の建物の貸借については、上記原則が厳格に適用されます。
  • 事業用の宅地・建物の貸借で、権利金(礼金など返還されない金銭)の授受がある場合は、その権利金の額を売買代金とみなして、上記「1. 売買・交換の媒介」の計算式を適用することができます。
  • 代理の場合も、上限は媒介の場合と同じです(借賃の1ヶ月分)。

報酬額の制限 概要表

取引の態様   取引額/対象   報酬限度額(税抜)
売買・交換の媒介(仲介)400万円超(取引額 × 3% + 6万円)以内
200万円超 400万円以下(取引額 × 4% + 2万円)以内
200万円以下取引額 × 5% 以内
売買・交換の代理(取引額は上記に同じ)媒介(仲介)の報酬限度額 × 2倍 以内
貸借(賃貸)の媒介・代理(居住用・事業用問わず)依頼者双方の合計で、借賃の1ヶ月分以内 ※原則、一方からは0.5ヶ月分以内(承諾があれば1ヶ月分まで可)
権利金の授受がある事業用物件権利金の額を売買代金とみなし、売買の規定を適用可

【共通の注意事項】

  • 上記は全て上限額であり、この範囲内で依頼者と宅建業者の合意によって報酬額が決定されます。
  • 宅建業者は、事務所の見やすい場所に報酬額の表を掲示する義務があります(法第46条第4項)。
  • 算出された報酬額(税抜)に対して、別途消費税を加算して請求することができます。

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