宅建業法の8種規制とは?

宅地建物取引業法

宅地建物取引業法(以下、宅建業法)における「8種規制」とは、宅地建物取引業者(以下、宅建業者)が自ら売主となり、買主が宅建業者でない(一般消費者である)場合において、買主を保護するために課される8つの特別な制限のことです。これらの規制は、専門家である宅建業者と一般消費者との間の情報の非対称性や交渉力の格差を是正し、公正な取引を確保することを目的としています。

この規制は、売主・買主双方が宅建業者の取引には適用されません。


8種規制の各内容

  1. 自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限(法第33条の2) 宅建業者は、自己の所有に属しない宅地又は建物について、原則として売買契約を締結してはなりません。これは、他人物売買によって生じる所有権移転の不履行リスクから買主を保護するためです。 ただし、以下の例外が認められています。
    • 宅建業者がその物件を取得する契約(予約を含む)を締結している場合(他人物売買)
    • 未完成物件で、手付金等の保全措置を講じている場合
  2. クーリング・オフによる契約の解除等(法第37条の2) 宅建業者の事務所等以外の場所でなされた宅地建物の買受けの申込みや売買契約は、買主が法定の書面(クーリング・オフについて告知された書面)を受け取った日から起算して8日以内であれば、書面により無条件で申込みの撤回や契約の解除ができます。
    • この解除により、宅建業者は受領した手付金等を速やかに返還しなければならず、損害賠償や違約金を請求することはできません。
  3. 損害賠償額の予定等の制限(法第38条) 契約の際に、当事者の債務不履行を理由とする損害賠償の予定額や違約金を定める場合、その合計額が代金の額の10分の2を超えることはできません。この規定に反する特約で、10分の2を超える部分については無効となります。
  4. 手付の額の制限等(法第39条) 宅建業者が受領できる手付金の額は、代金の額の10分の2以内に制限されます。この制限を超える部分については無効です。 また、宅建業者が受領した手付金は、その名目にかかわらず、常に「解約手付」としての性質を持ちます。これにより、買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を現実に提供することで、契約を解除することができます。
  5. 契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)に関する特約の制限(法第40条) 売買の目的物である宅地建物に契約の内容と異なる点(契約不適合)があった場合、宅建業者が負うべき責任について、民法の規定よりも買主に不利となる特約をすることはできません。そのような特約は無効となります。
    • ただし、契約不適合責任を負う期間を「目的物の引渡しの日から2年以上」とする特約は有効とされています。
  6. 手付金等の保全措置(法第41条、第41条の2) 宅建業者は、一定額を超える手付金等を受領する場合、その返還債務を保証するための保全措置を講じなければなりません。これは、宅建業者の倒産等により、手付金等が返還されなくなるリスクから買主を保護するための制度です。保全措置を講じるまでは、宅建業者は買主から手付金等を受領できません。
    • 未完成物件の場合:代金の5%または1,000万円を超える手付金等
    • 完成物件の場合:代金の10%または1,000万円を超える手付金等
  7. 割賦販売契約の解除等の制限(法第42条) 宅地建物の割賦販売(分割払い)において、買主が賦払金の支払いを遅延した場合でも、宅建業者は直ちに契約を解除したり、残代金全額の支払いを請求したりすることはできません。
    • 30日以上の相当の期間を定めて、その支払を書面で催告し、その期間内に支払いがなかった場合に初めて、契約の解除等ができます。
  8. 所有権留保等の禁止(法第43条) 割賦販売において、宅建業者は目的物件を買主に引き渡した後は、代金の額の10分の3を超える額の金銭の支払いを受けるまでの間、その物件に抵当権を設定したり、譲渡担保に供したりするなどの行為は禁止されます。これは、支払いが完了していない物件が担保に取られるなどして、買主の権利が不安定になることを防ぐためです。

8種規制の概要表

     規制の名称      内容関連条文
1. 自己所有に属しない物件の売買契約締結の制限原則として、自己所有でない物件の売買契約は禁止。例外あり。第33条の2
2. クーリング・オフ事務所等以外の場所での契約は、書面受領後8日以内なら無条件で解除可能。第37条の2
3. 損害賠償額の予定等の制限損害賠償額の予定・違約金の合計は、代金の 102​ 以内。超過分は無効。第38条
4. 手付の額の制限等受領できる手付金は代金の 102​ 以内。超過分は無効。手付は解約手付とみなされる。第39条
5. 契約不適合責任に関する特約の制限民法の規定より買主に不利な特約は無効。ただし引渡しから2年以上とする特約は有効。第40条
6. 手付金等の保全措置一定額以上の手付金等を受領する場合、保全措置が必要。 (未完成物件:代金の5%または1千万円超、完成物件:代金の10%または1千万円超)第41条、第41条の2
7. 割賦販売契約の解除等の制限支払遅延があっても、30日以上の期間を定めた書面催告がなければ契約解除できない。第42条
8. 所有権留保等の禁止割賦販売で物件引渡し後、代金の 103​ 超の支払いを受けるまで、担保権設定等は禁止。第43条

コメント

タイトルとURLをコピーしました