建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)とは
「建物の区分所有等に関する法律」(以下、「区分所有法」といいます)は、マンションのように、一棟の建物を構造上区分し、それぞれ独立して住居、店舗、事務所などの用途に使えるようにした部分(専有部分)を所有の対象とすることを認める法律です。このような所有形態を「区分所有」といい、その権利者を「区分所有者」と呼びます。
定義・基本的概念
- 区分所有権(第1条、第2条第1項): 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときに、その各部分を目的とする権利のことです。
- 専有部分(第2条第3項): 区分所有権の目的となる建物の部分のことです。壁、床、天井などで区画され、独立して使用できる部分を指します。
- 共用部分(第2条第4項): 専有部分以外の建物の部分(廊下、階段、エレベーター、エントランス、建物の基礎部分など)、専有部分に属しない建物の附属物(電気・ガス・水道設備など)、及び規約によって共用部分とされた部分(集会室、管理人室など)のことです。共用部分は、原則として区分所有者全員の共有に属します(第11条第1項)。
- 敷地利用権(第2条第6項): 専有部分を所有するために、建物の敷地(建物が所在する土地及び規約で建物の敷地と定められた土地)を利用する権利のことです。借地権の場合もあります。専有部分と敷地利用権は、原則として分離して処分することができません(第22条)。
区分所有者の権利と義務
- 専有部分の使用: 区分所有者は、法令の制限内において、自由にその専有部分を使用、収益及び処分することができます(民法第206条)。ただし、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはなりません(区分所有法第6条第1項)。
- 共用部分の使用: 各共有者は、共用部分をその用方に従って使用することができます(区分所有法第13条)。
- 費用の負担と利益の収取: 各共有者は、その持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取します(区分所有法第19条)。持分割合は、原則としてその有する専有部分の床面積の割合によります(第14条)。
- 義務違反者に対する措置: 共同の利益に反する行為をする区分所有者に対しては、行為の停止等の請求(第57条)、専有部分の使用禁止請求(第58条)、区分所有権の競売請求(第59条)などの措置が認められています。
管理
- 区分所有者の団体(管理組合)(第3条): 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができます。この団体を一般に「管理組合」と呼びます。区分所有者は当然にこの団体の構成員となります。
- 管理者(第25条): 管理組合は、規約に別段の定めがない限り、集会の決議によって、管理者を選任し、又は解任することができます。管理者は、共用部分等を保存し、集会の決議を実行し、規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負います。
- 管理規約(第30条): 建物もしくはその敷地もしくは附属施設の管理または使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができます。規約の設定、変更、廃止は、「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」の多数による集会の決議によらなければなりません(第31条第1項)。
- 集会(第34条以下): 管理組合の最高意思決定機関です。管理者は、少なくとも毎年1回集会を招集しなければなりません(第34条第2項)。集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決します(第39条第1項)。共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決しますが、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができます(第17条第1項)。
建替え
- 建替え(第62条): 建物を建替える場合は、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数による集会の決議が必要です。この決議においては、建替えの内容や費用分担などについても定める必要があります。
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