宅建業における住宅瑕疵担保履行法

宅地建物取引業法

住宅瑕疵担保履行法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律)

宅地建物取引業法とは別の法律ですが、宅地建物取引業者(以下、宅建業者)に重要な義務を課す、密接に関連する法律です。

この法律の目的は、新築住宅の買主を保護することです。新築住宅の売主である宅建業者等は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づき、住宅の構造耐力上主要な部分雨水の浸入を防止する部分における瑕疵(契約不適合)について、引渡しから10年間の担保責任を負います。

しかし、その10年間の間に業者が倒産してしまうと、この責任を果たすことができなくなります。そこで、住宅瑕疵担保履行法は、売主である宅建業者に対し、あらかじめその責任を果たすための資金力(資力)を確保しておくことを義務付けています。


法律の対象と資力確保措置

この法律が義務付ける資力確保措置は、以下の2つの方法のいずれかです。宅建業者は、自ら売主として新築住宅を引き渡す場合、どちらかの措置を講じなければなりません。

  1. 保証金の供託
  2. 住宅瑕疵担保責任保険への加入

① 保証金の供託

宅建業者が、主たる事務所の最寄りの供託所(法務局)に現金を預ける方法です。供託する額は、過去10年間に供給した新築住宅の戸数に応じて算定され、高額になります(最低でも2,000万円)。このため、多くの業者は次に説明する保険への加入を選択します。

② 住宅瑕疵担保責任保険への加入

国土交通大臣が指定する保険法人との間で、住宅瑕疵担保責任保険契約を締結する方法です。この保険に加入していれば、万が一、宅建業者が倒産しても、住宅の買主は保険法人に対して直接、瑕疵の補修費用等を請求することができます。


宅地建物取引業者が負う主な義務

この法律に基づき、宅建業者は以下の義務を負います。

  1. 資力確保措置の実施義務 新築住宅の売主となる場合、引き渡す前に必ず「保証金の供託」または「保険への加入」のいずれかの措置を講じなければなりません。
  2. 重要事項説明(35条書面)における説明義務 新築住宅の売買契約を締結するに、買主に対し、講じる資力確保措置の内容(供託か保険か、保険法人の名称、供託所の所在地など)を重要事項説明書(35条書面)に記載し、説明しなければなりません。
  3. 契約締結時の書面交付義務 新築住宅の売買契約を締結した際には、買主に対し、供託所の所在地等が記載された書面、または保険契約を証明する「保険付保証明書」を交付しなければなりません。
  4. 基準日における届出義務 全ての宅建業者は、年2回(基準日:3月31日と9月30日)、基準日から3週間以内に、免許権者(国土交通大臣または都道府県知事)に対して、資力確保措置の状況を届け出る義務があります。
    • ペナルティ: この届出を怠ると、基準日の翌日から起算して50日を経過した日以降、新たに自らを売主とする新築住宅の売買契約を締結することができなくなります。

住宅瑕疵担保履行法の概要表

【資力確保措置の比較】

項目  ① 保証金の供託② 住宅瑕疵担保責任保険への加入
概要宅建業者が自ら供託所(法務局)に現金を預ける制度国土交通大臣指定の保険法人が提供する保険に加入する制度
費用高額(最低2,000万円から。供給戸数により変動)比較的少額な保険料(物件ごとに支払い)
手続き供託所に供託手続きを行い、その旨を免許権者に届け出る保険法人と保険契約を締結する
買主の保護業者が倒産した場合、買主は供託金から直接弁済を受けられる業者が倒産した場合、買主は保険法人に直接保険金を請求できる
選択状況資金力のある一部の業者に限られるほとんどの業者が選択する一般的な方法

【宅地建物取引業者の義務】

義務の名称     時期      内容
資力確保措置の実施新築住宅の引渡しまで「保証金の供託」または「保険への加入」を行う。
重要事項説明契約締結講じる資力確保措置の内容を買主に説明する(35条書面)。
書面の交付契約締結時供託に関する書面または保険付保証明書を買主に交付する。
状況の届出年2回(基準日から3週間以内)資力確保措置の状況を免許権者に届け出る。
新規契約の制限届出を怠った場合基準日の翌日から50日経過後、新築住宅の売買契約ができなくなる。

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