連帯債務
定義
連帯債務とは、数人の債務者が、同一内容の給付について、各自が独立して全部の給付をなすべき債務を負担し、そのうちの一人の履行があれば他の債務者も債務を免れるという多数当事者の債務関係です(民法第436条以下)。
特徴
- 債権者に対する関係(対外的効力):
- 各連帯債務者は、債権者に対し、それぞれ全部の給付をする義務を負います(民法第436条)。
- 債権者は、連帯債務者の一人に対し、または同時にもしくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部または一部の履行を請求することができます(民法第436条)。
- 連帯債務者の一人について生じた事由は、原則として他の連帯債務者に影響を与えません(相対的効力の原則、民法第441条本文)。ただし、弁済、更改、相殺、混同、請求、時効の完成・更新など、一定の事由については他の連帯債務者にも効力が及びます(絶対的効力、民法第438条、第439条第1項、第440条、第457条第1項など)。
- 連帯債務者間の関係(対内的効力):
- 連帯債務者間には、通常、負担部分が存在します。
- 連帯債務者の一人が自己の負担部分を超えて弁済をしたときは、他の連帯債務者に対し、その超えた部分について求償することができます(民法第442条第1項)。この求償権には、弁済その他自己の財産をもって共同の免責を得た日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償が含まれます(民法第442条第2項)。
保証債務
定義
保証債務とは、主たる債務者がその債務を履行しない場合に、保証人がその履行をする責任を負う債務です(民法第446条第1項)。保証契約は、書面でしなければその効力を生じません(民法第446条第2項)。事業に係る貸金等債務を主たる債務とする保証契約または主たる債務の範囲に事業に係る貸金等債務が含まれる根保証契約は、保証人になろうとする者が契約締結日の前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じません(民法第465条の6第1項)。
特徴
- 附従性: 保証債務は、主たる債務の存在を前提とし、その内容・範囲も主たる債務に依存します。主たる債務が不成立・無効であれば保証債務も原則として成立せず、主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅します(民法第448条)。
- 随伴性: 主たる債務が移転すれば、原則として保証債務もそれに伴って移転します。
- 補充性: 保証人は、まず主たる債務者が履行すべきであり、二次的な責任を負うにとどまります。この補充性から、以下の権利が認められています。
- 催告の抗弁権: 債権者が保証人に債務の履行を請求してきたとき、保証人は、まず主たる債務者に催告すべき旨を請求できます。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、またはその行方が知れないときは、この限りではありません(民法第452条)。
- 検索の抗弁権: 債権者が催告の抗弁権に従い主たる債務者に催告した後でも、保証人が、主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、まず主たる債務者の財産について執行すべき旨を請求できます(民法第453条)。
- 保証人の求償権: 保証人が主たる債務者に代わって弁済をした場合、主たる債務者に対して求償権を有します(民法第459条第1項、第462条)。
連帯保証
定義
連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担することを約する保証です(民法第454条)。
特徴
- 保証債務の特則: 連帯保証も保証の一種であり、附従性や随伴性は通常の保証と同様に有します。
- 補充性の排除: 連帯保証人には、通常の保証人に認められる催告の抗弁権および検索の抗弁権がありません(民法第454条)。つまり、債権者は、主たる債務者の資力や履行状況に関わらず、直ちに連帯保証人に対して全部の履行を請求することができます。
- 分別の利益の不存在: 数人の保証人がいる場合、各保証人は原則として頭数で分割された額についてのみ保証債務を負います(分別の利益、民法第456条、第427条)。しかし、連帯保証の場合にはこの分別の利益がなく、各連帯保証人はそれぞれ債務の全額について責任を負います。
- 連帯債務の規定の一部準用: 連帯保証人について生じた事由の効力や、連帯保証人間の求償関係などについては、連帯債務の規定が一部準用されます。
特徴項目 | 連帯債務 | 保証 | 連帯保証 |
債務者の立場 | 各自が独立して全部の債務を負う(主従関係なし) | 主たる債務者が履行しない場合に二次的に履行責任を負う(主従関係あり) | 主たる債務者と連帯して債務を負う(主従関係あり、ただし補充性なし) |
債権者の請求 | 各連帯債務者に対し、同時または順次に、全部または一部の履行を請求可能 | 原則としてまず主たる債務者に請求。保証人は催告の抗弁権・検索の抗弁権を行使可能 | 主たる債務者への請求の有無にかかわらず、連帯保証人に全部の履行を請求可能(催告・検索の抗弁権なし) |
催告の抗弁権 | なし | あり(民法第452条) | なし(民法第454条) |
検索の抗弁権 | なし | あり(民法第453条) | なし(民法第454条) |
分別の利益 | 各債務者が頭割りで負担するのではなく、各自が全額について責任を負う(当然に適用) | 数人の保証人がいる場合、原則としてあり(民法第456条) | なし |
附従性 | なし(各債務は独立。ただし、債務の目的は共通) | あり(民法第448条) | あり |
債務者間の求償 | 負担部分を超える弁済をした者は、他の連帯債務者に求償可能(民法第442条) | 保証人が弁済した場合、主たる債務者に求償可能(民法第459条、第462条)。共同保証人間での求償もあり得る。 | 連帯保証人が弁済した場合、主たる債務者に求償可能。他の連帯保証人との間では連帯債務の規定を準用。 |
書面等の要否 | 不要(原則) | 書面または電磁的記録が必要(民法第446条第2項、第3項)。事業用融資の個人保証は公正証書が必要な場合あり(民法第465条の6)。 | 書面または電磁的記録が必要。事業用融資の個人保証は公正証書が必要な場合あり。 |
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