錯誤とは
民法上の錯誤とは、契約などの法律行為において、表意者(意思表示をする人)が重要な勘違いをしてしまい、その結果、自分の内心の意思と表示した意思が食い違ってしまった状態を指します。つまり、「思っていたこと」と「実際に言ってしまったこと」がズレている状態です。
錯誤の具体例
表示錯誤
(1)表示上の錯誤
10000円を、誤って1000円と表示してしまった。
アイスクリームをソフトクリームと言い間違えた。
(2)表示の意味に関する錯誤
1グロスを10ダースと誤認して注文した。
基礎事情錯誤
性質錯誤 受胎した良馬と思ったが実は受胎能力の無い馬だった。
単なる動機の錯誤 他に連帯保証人がいると聞かされていたが、実際には他の連帯保証人はいなかった。
錯誤の効果・要件
効果 | 取消し可能 |
なぜ? | 表意者を保護するため。 |
要件(1号) 表示錯誤 | 表示に対応する意思を欠くこと。錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らし重要なものであること。表意者に重大な過失がないこと。 |
要件(2号) 基礎事情錯誤 | 表意者が基礎とした事情について、その認識が真実に反し、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていること。錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らし重要なものであること表意者に重大な過失がないこと。 |
表意者に重過失がある場合。
原則 | 取り消すことができない。 |
例外 | 相手方が、表意者が錯誤に陥っていることについて知っていた、又は重過失により知らなかった(悪意・重過失)場合。相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていた場合。 |
【応用】重要な錯誤とは?
- 表意者に錯誤がなかったならば、その意思表示をしなかったであろうと考えられること。
- 一般人もその意思表示をしなかったであろうと考えられること。
これは、表意者と相手方の調和を図るという観点から、重要な錯誤の場合のみ表意者が保護されるという趣旨になります。
第三者保護
取消し前 | 善意・無過失の第三者に対抗できない。 心裡留保や虚偽表示は表意者に帰責性があるため、第三者保護に無過失を要しませんが、錯誤は表意者保護の目的があるため、第三者には無過失を要します。 |
取消し後 | 対抗関係(二重譲渡に類似) |
【補足】なお、錯誤と詐欺・強迫は、選択行使できます。
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